11月3日夜 | 絶叫機械-残酷物語

11月3日夜

 友達が、今日、ごはんをたべながら、怒っていた。

「イラクどう思う」

「ああ、首切られた人がいたねえ」

 私は、新聞を読まないので、ニュースがよくわからない。

 友達は、口にほおばった米をもりもり飲み込みながら、しゃべった。

「たぶん日本でも、勘違いしてる人がいると思う。首相が『テロに屈しないぞ』って言ってるのが、まるで9.11とつながりがあるみたいにさ。関係ないんだ、イラクとアルカイダは。大量破壊兵器だってなかった。ブッシュは、認めてないけどね。イラクの武装勢力は、関係ないのに侵略されたから、来た奴を片っ端から殺してるだけだよ。ひどいことだけど、当たり前なんだ、殺されたから、殺す」

 私は争いというものが、本当に苦手なので、困った。

「きみは、ひどいことをされたら、どうする」

「どういうこと?」

「やってもいないことで、殴られたら?」

「警察に言うよ」

「殴ったのはその警察なんだよ、まあ本当は違うんだけど」

 私は、よくわからなくなった。助けてくれるはずの人が、襲ってきたら、誰に助けを求めればいいんだろう。

「じゃあ、軍隊が、イラクから、出ていけばいいのかなあ」

「そういうわけにはいかないよ、実際いまはテロが起こってしまっているのだから、その声明に従って兵を撤退させたら、国の破滅だね、食い物にされるよ。ま、だからといってイラク人を締め付けてもテロは止まらないしね」

「それじゃ、どうすればいいの」

「さあね、せいぜい自分の死を右や左に利用されないように、気をつけて生きるしかないんじゃないの」

 彼はそう言って、ごはんを食べた。私は、彼の喋り方が、かなり偉そうだったから、なんだか嫌な感じがして、反論しようと思ったけど、何に反論すればいいのか、思いつかなかった。

 誰に反論すればいいのか、思いつかなかったんだよ。