11月20日朝 | 絶叫機械-残酷物語

11月20日朝

 夜の廃都で、子供たち同士が二つの集団に分かれて争っている。

 ある夜、おれの所属している団のリーダーが相手方につかまり、私刑を受けた。おれたちは丘を越えて広場へ向かう、すると広場では、拷問を終えた奴らが、方々に散っていくところだった。

 広場に入り、中央のドラム缶に近づく。

 目を潰され、腕の骨を砕かれたリーダーは、ドラム缶に寄りかかって倒れていた。トレードマークの筋肉と、オレンジのオーバーオールが血と小便で汚れている。

 仲間たちは、もう助からないリーダーを見て、次々に笑い出した。鬱屈が溜まっていたのだろう。

 おれだけは、笑わなかった。

 ドラム缶に寄りかかっていたリーダーを、引っ張って寝転がす。もう抵抗する気力もないらしい、かすかに首を振った。

 まず最初に、失った左手首の先に刃物をつけた奴が進み出て、リーダーの肩に刃を沈み込ませた。

 リーダーは「あぁあぁ~」と力ない声を漏らした。

「たすけて、たすけて」

 歯が折れ、裂けた唇から、情けない言葉が出て、そこにいた全員が失笑した。

 "手無し"は真顔に戻ると、更に深く刃を差し込んだ。

「この手は、あんたが切ったんだ」

 その言葉をきっかけに、群れはリーダーを食い尽くした。

「お前がおれの目を潰したんだ!」

「前歯を折りやがった!」

「許さねえ!」

 刃が、棍棒が、靴底が、かつて長だった少年の骨を割り、皮を剥ぎ、肉をすりつぶした。

 やがて広場には、おれだけが残った。

 目の前には、両手両足と性器を切り取られた、肉の塊が転がっている。

 おれは奴の股間のあたりを踏んでみた。何の反応もない。

「こんなんじゃ、もう何もできないな」

 夜は、明けていた。